2019年3月9日土曜日

七番:東十条駅前の溢れ出る湧水

 見晴の滝跡からさらに本郷台地の崖線を北上していくと、静かな住宅地の道はやがて線路沿いに出て、ひっきりなしに通過する電車と踏切の音が頻繁に聴こえる。崖線側の道端には「井頭まちかど広場」と名付けられた小さなスペースがある。井頭という地名があるということは、どこかに水が湧いている、もしくは湧いていたということだ。路地の奥に行くと、果たして崖線下にある個人宅の庭に、湧水を湛えた小さな池が見えた。

 別の路地でも、やはり崖線の突き当たりの個人宅に池が見えた。いずれも池の傍の崖側には祠があって、古くから水が湧いていたのだろうことをしのばせる。家々が段状に立ち並ぶ崖は、かつては木々に覆われていたのだろうか。

 この辺りから段々、崖線が線路に近づいてくる。十条駅の近くまで来ると、線路のすぐそばまで擁壁や、崖を切り取って建てられていた家屋が迫る。そして写真の左端の階段の下から、水が注ぐ音が聞こえて来る。

 水の音のする方を見ると、マンションの階段と行き止まりの私道の階段に挟まれた、細長いV字の隙間に挟まるように自噴の井戸のようなものがある。この中で湧いているのか、それとも奥の崖下に湧く水を引いて来ているのか。何れにしてもしっかりした量の水だ。
ここまで巡って来た湧水と同じく、ここもまた標高10mほど。もう少し南では滝となっていた水は、ここでは地表近くに湧く。

 水は蓋をされたコンクリートの桝から突き出す竹筒から絶え間なく流れ出ており、陶器の青い水鉢に注いでいる。前に来た時とは色が違っており、入れ替えられているようだ。それなりに大事にされているのだろう。桝はよくみると手水鉢や防火水槽のような簡易な意匠が施されており、案外古いそうだ。

 
 溢れた水は下の排水口へ落ちている。桝の端からも染み出した水が落ちる。

水に触れてみると、冬の冷たい風に冷え切った手には、とても温かく感じた。



住所:北区岸町2
水量:ふつう
用途:生活用水
立地:本郷台地
タイプ:崖線
湧出地点の標高;10m
水系:石神井用水上郷用水
東京都湧水台帳コード:Ho-11
地図出典:カシミール3Dで基盤地図情報EDMデータ及び地理院地図を表示したものを加工

2 件のコメント:

  1. 東十条に生まれ育ち60数年この湧き水はよく知っています。
    全く枯れることなく水量ま変わらずどこに水源があるのか気になっていました。
    母の話だと昭和30年頃よく断水がありこの水で近所の主婦の方々が子供のおしめとか洗濯してたようです。

    返信削除
    返信
    1. 貴重な証言コメント、ありがとうございます。地域の方々の生活に密着した湧水だったのですね。

      削除