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2019年6月6日木曜日

二十三番:慶応三田キャンパス向かい、大松寺の湧水池

 続いて大信寺から桜田通りを北東に600mほどの大松寺に向かう。大松寺は慶応三田キャンパスの向かい、桜田通りが高輪台地と通称”三田段丘”の鞍部を越えるあたりの高輪台地の麓に位置している浄土宗の寺院で、八丁堀で1612年に創建の後1635年にこの地へ移ってきたという。
 山門を入ると右手に庫裏があり、正面には墓地と庭園が、そして奥の台地の斜面に、コンクリート造りの建屋の上に仏塔が聳える独特な作りの本堂が見える。(なお、ネット上の情報のほとんどが庫裏を本堂と勘違いしているので注意)

 5月に訪れた際はたまたま庭園を通り斜面を登って本堂の前にいたる小径が開放されていて、植栽の間から池を確認することができた。水は緑色に濁っているが、台地側に設けられた竹筒から水が注いでいるのが見える(写真左端中程)

 注ぎ口をクローズアップ。ちょろちょろとだが、絶え間なく水が流れ落ちる。港区の調査に記されている「暗渠排水」で導かれた湧水がこちらなのだろう。崖の斜面に集水管を差して地下水を導き、池に落としているような仕組みになっているようだ。標高は8mほど。台地の末端だからだろう、だいぶ低い。

 3月に訪れた際は、外から池に近づくことはできなかったのだが、居合わせた寺院の関係者の方にお話しを伺ったところ、庫裏の中に入れていただき近くから池を見ることができた。庫裏の半分ほどが客間になっていて、その正面に庭園と池が見渡せるようになっていた。このときは竹筒からの水は流れてはいなかった(写真中央やや右寄り)。季節や気候により、水は出ていたり止まっていたりということだった。

 一方で、お話を聞いていくうちに、実はもう一か所、たぶん水が湧いている場所がある、ということがわかった。ふだん非公開のエリアのようだが、幸いにも案内していただけた。池の右手には庫裏から本堂へと渡り廊下が続いているのだが、池の一部がしっぽのように細長く伸びていて、その渡り廊下の下を潜り、庫裏の裏手まで続いている。下の写真はしっぽ部分から渡り廊下方向をみたところになる。

 ”池のしっぽ”は庫裏の奥で切れているのだが、お話しによればその末端から水が湧いているようで、子供のころからそこの一角だけは絶えず水が澄んでいるという。

 近くまで寄らせていただくと、水面に動きは見えないものの、確かに端っこの石に囲われた一角は水が澄んでいた。そして、”池のしっぽ”の部分も池本体よりは濁りが少ない。ここから水がじわじわと湧き出して池に流れ込んでいるのだろうか。、標高は7.6mほどと、竹筒の方とほぼ同じ高さだ。もしかするとこちらも暗渠排水で導水しているのかもしれないがなのでここにも人目に触れない湧き水が残っていた。

 なお港区の調査では、以前は崖下の擁壁の水抜き穴からもわずかに水が湧き出していたというがこちらは現在は枯渇しているようだ。また、1990年代はじめころまでは前回記事の大信寺とこちらの大松寺の間に並ぶ寺院のいくつかにも湧水があったが、現在では残念ながらすべて消滅してしまっている。

住所:港区三田4
水量:わずか
用途:池
立地:淀橋台
タイプ:崖線
湧出地点の標高;8m
水温;不明
水系:古川
東京都湧水台帳コード:Yo-5(竹筒の方)
地図出典:カシミール3Dで基盤地図情報EDMデータ及び地理院地図を表示したものを加工

2019年5月29日水曜日

二十二番:三田の大信寺に残る非公開の2段湧水池

 しばらく追ってきた目黒台の湧水を離れ、港区の高輪・三田地区へと移ろう。この地域には淀橋台の末端である高輪台地~三田段丘とも呼ばれる台地が、南西から北東に向かって、細長く岬のように突き出している。かつてはその尾根の上を三田上水が通り、台地の崖には各地で水が湧き、東側は東京湾に、西側は古川へと注いでいた。今では水の気配は希薄になっているが、それでも台地の縁にあるいくつかの寺社の片隅には、湧水やその水を溜めた池が残っている。多くは非公開となっているのだが、縁あって何か所か、見学させていただくことができた。その中のひとつ、大信寺の湧水池をご紹介しよう。

 大信寺は魚籃坂の麓近くにある、1611年に創建され1635年にこの地へ移転してきた浄土宗の寺院だ。

 江戸三味線製作の始祖石村源左衛門をはじめとする石村家の菩提寺となっていて、三味線寺として知られる。本堂の左手、桜の巨木の陰には石村近江顕彰碑が建っている。

 港区の調査資料や都の湧水台帳の情報をもとに訪れてみたのだが、湧水はどうやら本堂の裏手にあるようで、見ることができない。うろうろしていると、たまたまいらしたご住職にお声がけいただいた。湧水は裏手の庭にある池に今でも湧いているが公開はしていない、とのことだったが、いろいろとお話ししているうちに、特別に見せていただけることになった。

 勝手口のようなところから庭へと入れていただく。庭は庫裏に面していて、台地の斜面の下に、北東から南東にかけて広がっている。よく手入れされている明るい庭で、それほど広くはないが背後の斜面をうまく使っていて奥行きを感じさせる。
 池は低地と、斜面の途中の2段に分かれていた。下の段の池は標高は12mほど。底から湧水がにじみ出しているらしいという。水は濁っており、このところの少雨であまり湧いていないようだ。

 池の端の小さな石橋を渡って斜面を少し上ると、上の段の池があった。標高14mほどだろうか。こちらは水嵩こそ浅いものの澄んだ水が溜まっている。崖下に配された岩の下などからじわじわと湧いているようだ。

 池の北東の端には井戸もあった。中を見せていただくと、池と同じくらいの水面に澄んだ水が溜まっていた。少雨で水はいつもよりは少ないという。

 上の段の池全景。背後の崖線の緑が美しい。最近手入れしたというこの崖には亀がたくさん住んでいて、もう少し(訪問は3月)すると冬眠から覚めて池に入るという。

 寺の外にでれば、桜田通り沿いには高層マンション群が立ち並び、車がひっきりなしに行き交う。魚籃坂から伊皿子坂にかけては90年代まで他にも何か所か湧水があったが、いずれもビルの建設などで姿を消している。そんな中で、この湧水がまだ何とか涸れずにいるのは奇跡的かもしれない。

 ちなみに今回ご厚意をいただいたご住職は非常に多才な方で、三味線寺ということで三味線ももちろんだが、更に雅楽、長唄からイタリア歌曲までこなされるといい、面白いエピソードをたくさん伺った。さらにパイロットの免許もお持ちで、東日本大震災の後は飛行機をチャーターして海上から散華をされたという。なんだかんだと3、40分、お庭を拝見しつつお話しを伺い、長居してしまった。

住所:港区三田4
水量:わずか
用途:池
立地:淀橋台
タイプ:崖線
湧出地点の標高;12m、14m
水温;不明
水系:古川
東京都湧水台帳コード:Yo-6
地図出典:カシミール3Dで基盤地図情報EDMデータ及び地理院地図を表示したものを加工