2019年7月26日金曜日

三十番:志村の湧水群(5)小豆沢公園西側に滲み出る湧水たち

 清水坂公園の湧水から、中山道を渡って東側の小豆沢へと移る。1889年から1947年までは志村小豆沢となっており、こちらも広い意味で志村地区といえるだろう。小豆沢という地名は、崩壊地を示す地名「アズ」「アザ」に由来しており、同じような成り立ちの地名として麻布などがあげられる。江戸時に記された新編武蔵風土記稿の中では、平将門が東国を支配していた頃、崖下の低地が荒川の入り江になっていて、小豆を積んだ船がそこで沈み水面に小豆が浮かんだから、といった由来が記されているというが、これは後付けだろう。
 中山道沿いには復元され庭園となった「薬師の泉」があるが、今回は飛ばしてその先、小豆沢公園へと向かう。小豆沢公園は台地の上下に跨って広がっており、敷地を東西に横切る崖線の斜面には緑が多く残っている。そして崖線の下には湧水が何か所か残っている。

 公園の崖下を抜ける道に覆いかぶさるように、木々が茂っている。崖の上の台地は標高24m、一方崖下の路上は標高7mほど。実に17mの標高差の斜面となっている。

 そして公園の手前からすでに、路上に数か所、水が染み出している。こちらは道路沿いの寺院。いつ来ても斜面を掘り抜いたようなガレージの奥から水が染み出して歩道のL型側溝に流れ込んでいる。溝が造られていることからも、常時流れていることがわかる。

 湧水が多くなる秋には、少し離れたL型側溝の継ぎ目からも水がとくとくと漏れ出すように湧く。

 公園の敷地前まで来ると、崖の斜面から流れ落ちてきた水が、擁壁を濡らしている。広がってしまっているので流れる水がはっきりと見えるわけではないが、路肩には水が溜まっていて、一定の水量があることが伺える。ここもいつも濡れており、常時水が湧いている場所だ。

上を見上げると、水はむき出しの崖線の斜面を微かではあるが流れをなして下って来ている。

 草の枯れる冬場に擁壁の上の斜面に踏み入ってみると、斜面中腹から地面にごく浅い溝ができていて、水がじわじわと湧き出してそこを流れているのがわかる。水量は極めて少ないが、これは小川の源流ともいってもよいような風景だ。

すぐ先には崖の斜面を台地上に斜めに上がっていく階段が続いている。鬱蒼とした緑に囲まれたこの階段沿いにもいくつか湧水がある。

まずは階段右側の側溝。こちらに流れている水も湧水だ。水源を辿ると途中のパイプから流れ出している。水温は18.8度。板橋区の調査では毎分2〜6リットルほどの水量が記録されている。

そして階段を中段まで登ると、右側に整備された小さな池がある。この池には左右2か所から湧水が流れ込んでいる。湧水地点はいずれも石組みで囲まれ整備されている。多い時期には2つあわせて毎分20リットルほど湧いていることもあるようだ。

こちらは西側、階段寄りの湧水地点。6月の水温は18.6度。今年の水量は少なく、湧き出す動きは目に見えないが、それでも水温は一定だ。

こちらは東側の湧水地点。水量は少ない。ここから少し奥にはいったところが先ほどの斜面から湧く微かな湧水地点だ。

 池に溜まった湧水は導水管で階段を潜り、崖の斜面を水路で東へと下りながら流れていく。この先にも湧水があるが、写真の枚数が多くなったので次の記事に分けて掲載する。


住所:板橋区小豆沢3
水量:崖線斜面:滲み出る程度 側溝:少ない 池の湧水地点:少ない
用途:池
立地:成増台(東京都の立地区分による)
タイプ:崖線
湧出地点の標高;路肩、側溝:7m 崖線斜面・池の湧水地点:10m
水温;側溝:18.8度 池の湧水地点:18.6度 (2019年6月) 
水系:新河岸川
東京都湧水台帳コード:Na-14, 15

地図出典:カシミール3Dで基盤地図情報EDMデータ及び地理院地図を表示したものを加工

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