志村城山公園から志村の崖線を東へと進んでいこう。前々回取り上げた自噴井を通り過ぎ、しばらく行くと、道路が崖線を斜めに上がっていく袂に広めの駐車場がある。
駐車場の入り口付近の角に、低いブロック塀で囲まれた不自然な敷地がある。その大部分は崖の斜面にかかっていて、緑のシートで覆われているが、崖下の一画は草が生い茂っている。ここに湧水がある。
夏場は完全に雑草に覆われていて、何が何だかわからないが・・・
雑草の勢いがなくなる秋から冬にかけては、草の隙間からちらほらと水面が見える。
さらに近づくとレンガで縁取りされた矩形の小さな池があるのがわかる。
ブロック塀に邪魔されてこれ以上は近づけないが、水は澄んでいて、中には真っ赤な和金が数匹泳いでいる。こちらが動くと草の陰に隠れてしまう。人から餌を貰っている金魚なら近づいてきたりするものだが、こんな環境だからまったく人馴れしていないのだろう。
この池はいつ来ても水が一定量溜まっていて、まったく濁ることもないから、今でもどこかから水が湧き出していて、そしてどこかへと流れ出しているのだろう。標高は8m前後と、これまでみてきた2箇所とほぼ同じだ。
1990年代半ばに板橋区が外部に委託した湧水調査に、この池が記録されている。そこでは池はとある個人宅の所有となっている。そう、かつてここには家が建っていた。家は斜面を降り切ったところにあり、上の道路に面した門から出入りしていたようだ。そして、その庭先にこの池があったのだ。下は1989年の航空写真。緑に囲まれて家が建っている。
出典:国土地理院地図・空中写真閲覧サービスより1989/11/3撮影写真
2000年代初頭にはこの家は取り壊されてしまった。その後、建屋のあった場所は隣接する駐車場に取り込まれたが、庭の部分は斜面にかかっていて利用できないためか、放置された。そして池もそのまま残った。下は2007年の航空写真となる。
出典:国土地理院地図・空中写真閲覧サービスより2007/4/30撮影写真
さて、金魚だ。家がなくなってからすでに15年以上が経つ。この金魚たちはどこからやってきたのだろうか。誰かが縁日の金魚でも放ったのか。ただ、ブロック塀の囲いを越えてまでそんなことをする人がいるとは思えない。とすると、かつての住人が飼っていた金魚が生き永らえているのか。その割には小柄だから、この池で生まれた子孫なのかもしれない。誰にも見られることのない観賞魚の一族が代々暮らしている、そう考えるとなかなか趣深い湧水池である。
なお、この近隣には敷地内に湧水のある家が数軒あるようだが、いずれも塀や生垣に囲われていて外から確認することはできない。
住所:板橋区志村2
水量:不明
用途:池
立地:成増台(東京都の立地区分による)
タイプ:崖線
湧出地点の標高;8m
水温;不明
水系:出井川
東京都湧水台帳コード:なし
地図出典:カシミール3Dで基盤地図情報EDMデータ及び地理院地図を表示したものを加工
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