続いて大信寺から桜田通りを北東に600mほどの大松寺に向かう。大松寺は慶応三田キャンパスの向かい、桜田通りが高輪台地と通称”三田段丘”の鞍部を越えるあたりの高輪台地の麓に位置している浄土宗の寺院で、八丁堀で1612年に創建の後1635年にこの地へ移ってきたという。
山門を入ると右手に庫裏があり、正面には墓地と庭園が、そして奥の台地の斜面に、コンクリート造りの建屋の上に仏塔が聳える独特な作りの本堂が見える。(なお、ネット上の情報のほとんどが庫裏を本堂と勘違いしているので注意)
5月に訪れた際はたまたま庭園を通り斜面を登って本堂の前にいたる小径が開放されていて、植栽の間から池を確認することができた。水は緑色に濁っているが、台地側に設けられた竹筒から水が注いでいるのが見える(写真左端中程)
注ぎ口をクローズアップ。ちょろちょろとだが、絶え間なく水が流れ落ちる。港区の調査に記されている「暗渠排水」で導かれた湧水がこちらなのだろう。崖の斜面に集水管を差して地下水を導き、池に落としているような仕組みになっているようだ。標高は8mほど。台地の末端だからだろう、だいぶ低い。
3月に訪れた際は、外から池に近づくことはできなかったのだが、居合わせた寺院の関係者の方にお話しを伺ったところ、庫裏の中に入れていただき近くから池を見ることができた。庫裏の半分ほどが客間になっていて、その正面に庭園と池が見渡せるようになっていた。このときは竹筒からの水は流れてはいなかった(写真中央やや右寄り)。季節や気候により、水は出ていたり止まっていたりということだった。
一方で、お話を聞いていくうちに、実はもう一か所、たぶん水が湧いている場所がある、ということがわかった。ふだん非公開のエリアのようだが、幸いにも案内していただけた。池の右手には庫裏から本堂へと渡り廊下が続いているのだが、池の一部がしっぽのように細長く伸びていて、その渡り廊下の下を潜り、庫裏の裏手まで続いている。下の写真はしっぽ部分から渡り廊下方向をみたところになる。
”池のしっぽ”は庫裏の奥で切れているのだが、お話しによればその末端から水が湧いているようで、子供のころからそこの一角だけは絶えず水が澄んでいるという。
近くまで寄らせていただくと、水面に動きは見えないものの、確かに端っこの石に囲われた一角は水が澄んでいた。そして、”池のしっぽ”の部分も池本体よりは濁りが少ない。ここから水がじわじわと湧き出して池に流れ込んでいるのだろうか。、標高は7.6mほどと、竹筒の方とほぼ同じ高さだ。もしかするとこちらも暗渠排水で導水しているのかもしれないがなのでここにも人目に触れない湧き水が残っていた。
なお港区の調査では、以前は崖下の擁壁の水抜き穴からもわずかに水が湧き出していたというがこちらは現在は枯渇しているようだ。また、1990年代はじめころまでは前回記事の大信寺とこちらの大松寺の間に並ぶ寺院のいくつかにも湧水があったが、現在では残念ながらすべて消滅してしまっている。
住所:港区三田4
水量:わずか
用途:池
立地:淀橋台
タイプ:崖線
湧出地点の標高;8m
水温;不明
水系:古川
東京都湧水台帳コード:Yo-5(竹筒の方)
地図出典:カシミール3Dで基盤地図情報EDMデータ及び地理院地図を表示したものを加工
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