2019年2月24日日曜日

二番:飛鳥山の湧水(2)崖線下の2ヶ所の湧水

さて、ストロー湧水があった場所(前回記事)から石神井用水下用水跡の道を線路沿いに南東に進むと、飛鳥山公園との境目の柵の下、コンクリート枡に水が落ちる音が聞こえてくる。その水は、崖の下の水溜りが大きくなった程度の池から流れ出ている。

そしてその奥には石組みの上からいく筋かの水がささやかな滝となって落ちている。滝の石組みは人工的なものだが、その水は本郷台地の崖線から自然に湧き出す水だ。
飛鳥山公園の明治通りに面した反対側には大掛かりな滝や渓流があって、公園を訪れた人々が憩い、夏には子供たちで賑わう。しかしそちらはあくまで人工的な構造物で、流れる水も水道水だ。裏側の崖線の斜面、ひっそりとした林に潜む本物の湧水を知る人は少ないだろう。
訪れた日は水辺に降りる小径は閉鎖され、野鳥が自由を謳歌していた。滝の水を飲みにヒヨドリがやってきた。

さらに南東に進むと、公園の敷地の端にもう1箇所、湧水が見られる。こちらは周りこそ石で囲って整備されているものの、水が滴り落ちるところには自然の地面が露出している。水が落ちている背後に見えるのはシルト層だろうか。飛鳥山付近の地質断面図を見ると、標高10〜15m付近より上が水を通しやすい砂や礫の山手層、その下が水を通しにくいシルトや砂の東京層となっている。ちょうどその境目を水が伝わってきている感じに見える。

湧水の後ろは標高25mの飛鳥山の台地、水が湧いているのは標高11m前後だ。6、7000年前の有楽町海進時、ここは奥東京湾の海岸線であり、波が打ち寄せる海食崖だった。台地の上では縄文時代前期の住居跡が見つかっている。縄文人たちは崖を降り、海岸線に湧く水を汲みにきていたのだろうか。そしてすぐそばを流れる石神井川で河川争奪が起こり、本郷台地を貫通して、今の上野方面から隅田川方面へと流路を大きく変えたのもその頃だ。
背後を数分おきに通過する列車の音が行き交い、台地の斜面の上からは囀る鳥の声が林に響き、そして足元では湧水がトポトポと落ちていく。現代と過去をつなぐ音に囲まれながら、滴る水を見つめ、そんな土地の歴史にしばし想いを馳せた。





この後は石神井川を越え、崖線の下を北上していこう。

住所:北区西ヶ原2
水量:小 (2ヶ所)
用途:池/なし
立地:本郷台地
タイプ:崖線
湧出地点の標高;11m前後
水系:石神井用水下用水(音無川)
東京都湧水台帳コード Ho-09/なし
地図出典:カシミール3Dで基盤地図情報EDMデータ及び地理院地図を表示したものを加工

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