2019年2月21日木曜日

一番:飛鳥山の湧水(1)ストローの湧水

なんだこりゃ…?
土どめの積み石の上に飛び出た2本のストロー。その先からはチョロチョロと水が流れ落ちている。
2016年の暮、音無橋の下で石神井川から分水されていた石神井用水下用水、別名”音無川”の流れていたルートを辿って私は王子駅からJRの線路と飛鳥山公園の丘に挟まれた線路沿いを歩いていた。そこで出くわしたのがこれだ。
飛鳥山公園は上野の方から赤羽にかけて続く標高20〜25mほどの本郷台地にあって、台地の北東には高低差20mに及ぶかつて海食崖だった急斜面が続いている。そこには崖線型の湧水が各所に点在しているのだが、このストローを通る水もよく見れば背後の崖、落ち葉の積もる土から浸み出した湧水だ。
公園で遊ぶ子供たちが仕掛けたのか、あるいは通りがかりの大人が徒らに挿してみたのか。何れにしても放っておけば石垣の斜面に染みを作る程度の湧き水を一筋の目に見える流れに可視化したそのセンス。感心することしきりであった。

しばらく後に訪れた時も、別のストローに差し替えられて水の流れは健在だった。

そして2019年2月。王子から赤羽にかけての崖線に点在する湧水をめぐる旅の端緒として再びここを訪れてみた。
秋以降の雨が少なかったせいか、水は涸れて石積みはすっかり乾いており、少し元気のない苔や、隙間から生える草だけが水の名残となっていた。
石積みの上にストローはなかった。が代わりに隅の欠けた陶製の布袋様が鎮座しているではないか。一体誰が連れてきたのやら。
近づいてみると、布袋様の裏の土の表面には水が染み出していて、まだ水脈は絶えていないことがわかる。また雨がまとまって降れば、湧き水は息を吹き返すだろうか。そしてその時は、また誰かがストローを挿しに来るだろうか。
さて、この先にはもう少しはっきりした湧水が残っているはずだ。布袋様には一旦別れを告げ、そっちを確認しに行こう。


住所:北区王子1
水量:滲み出る程度
用途:なし
立地:本郷台地
タイプ:崖線
湧出地点の標高:11m
水系:石神井用水下用水(音無川)
地図出典:カシミール3Dで基盤地図情報EDMデータ及び地理院地図を表示したものを加工

2 件のコメント:

  1. おお、始まりましたね! この台地上は、大井町あたりと並んで東京市域で最も古い道(今のところww)が確認されているところなので、巡礼の始まりにもぴったりですね。

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    1. コメントありがとうございます!ゆるゆると、続けていきたいと思っております。

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