2019年8月14日水曜日

三十三番:拝島段丘の湧水(1)宮沢諏訪神社の"宮の沢"湧水

 新宿から中央線~青梅線と乗り継ぎ西へ数十分の昭島駅。電車を降りてここから多摩川沿いの低地へと向かおうとすると、崖を3回下ることとなる。駅がある立川段丘から、青柳段丘、拝島段丘と、多摩川が形成した3つの段丘が重なっているからだ。その一番下、拝島段丘の崖線には、かつてあちこちで水が湧いていた。これらのうち今でも残っているところをいくつか巡ってみることにしよう。まずは諏訪神社の湧水(下の地図の★印)を訪ねてみよう。

 諏訪神社は諏訪松中通り、奥多摩街道、新奥多摩街道が三つ巴で交差する昭島市宮沢町の一角にある。10世紀末に諏訪から勧請して創建されたと伝わり、宮沢村の鎮守社となっている。奥多摩街道から境内に入り、鳥居を潜ると、そこは高い木々に囲まれた静かな空間だ。参道の左手には厳島神社が、そして、正面には拝島段丘の上から見下ろすように諏訪神社の社殿が鎮座している。

 段丘の斜面は丸石を積み上げた擁壁に覆われているが、その左側の崖下、少し抉れたところに、水が湧いている。2003年には東京の名湧水57選に選ばれている「諏訪神社の湧水」だ。湧水やそこから流れ出す水路は擁壁と同じく丸石で囲われて整えられ、手水場として利用されている。

 水は石組みの下やその右側の切り株の下から湧き出している。標高は88m。拝島礫層を流れてきた地下水が地上に出ているという。水底も礫や小石となっていて、23区内の湧水とは様子が違う。
 水量は降水量や季節による変動が大きく、多い時期にはもう少し上からも染み出していたり、噴き出るように勢いよく水が湧いているときもある。市の実施した過去の調査では、通常は概ね毎分80~110リットル程度だが、多い時では230リットル、少ない時では14リットル、また水量ゼロのときもあったという。拝島面(拝島段丘)にはローム層が堆積していないといい、変動が大きいのはこの点も関係しているのだろうか。
 直近でも2019年の春先には、前年秋の少雨の影響か湧水が涸れていたが、6月、8月に訪れたときは水量はそれほどではないものの、いずれもしっかりと湧いていた。水温を測ると16.6度と都心より1度以上低い。冷んやりと気持ちがよい。

6月に訪れたときの様子を動画で。

水は手を濯げるよう石で軽く堰き止められたのち、水路を流れていく。川の始まりだ。

 この流れが宮の沢と呼ばれ、一帯の宮沢町という地名の由来となったという。今では玉石で整備されていて沢という感じでもないが、神社の横を抜ける諏訪松中通りの切り通しがなかったころはもっと鬱蒼としていて沢のようだったのだろう。

 川は段差を滝となって落ち、厳島神社を囲む池に音を立てて注ぐ。

 池の中島にある厳島神社は明治初めまでは近くの阿弥陀寺境内にあったのを遷座してきたというから、池はその時につくられたのだろうか。

池から溢れた湧水は社務所の下を潜って、神社の外へと流れ出していく。

 湧水の小川は木々に囲まれた集落の中を抜けていく。水の中をよく見ると、小さく浅い流れなのに、魚が泳いでいたりする。川下から遡ってきたのだろうか。

流れは奥多摩街道沿いに出ると歩道下の暗渠となってしばらく流れたのち、再び姿を現して他の湧水からの流れをあわせ中沢堀となり、最終的には昭和用水に合流する。


住所:昭島市宮沢町2
水量:普通〜多い
用途:手水・池・川
立地:拝島段丘(東京都の立地区分による)
タイプ:崖線
湧出地点の標高:88m
水温:16.6度(2019/6)
水系:中沢堀〜昭和用水〜残堀川
東京都湧水台帳コード:Ha-14

地図出典:カシミール3Dで基盤地図情報EDMデータ及び地理院地図を表示したものを加工

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